重要事項説明書とは?
重要事項説明書とは?
重要事項説明書とは、その名の通り、不動産に関する重要事項を説明した書類になります。宅建業法という法律に基づき、不動産仲介会社が買主に対して必ず行わなければならないものになります。
不動産は一生で一番高いお買い物と言われますが、その不動産には様々な物的、法律的、経済的、環境的要因があります。
それらについてまとめたものが重説になります。何が書かれているかを詳しく説明します。
重要事項説明の目的
重要事項説明とは、宅地建物取引業法(宅建業法)という法律に定められた手続きで、不動産会社は売買の仲介に入る際には、この宅建業法に基づき、重説を行わなければなりません。
逆に、売主・買主間で直接取引し、仲介会社を利用しない場合、売主が宅建業者でなければ(例、不動産会社)、この重要事項説明書がない可能性もあります。
重要事項説明のタイミング
重要事項説明は、その名の通り重要事項を説明するため、売買契約(もしくは賃貸契約)の前に実施しなければなりません。また、この重要事項の説明にあたっては、仲介会社及び取引担当者である宅建士は、事前に記名押印をし、宅建士は宅建士証を呈示して説明を行う義務があります。
※不動産賃貸の重要事項説明では、①安定した双方向通話が可能 ②文字・音声を十分に認識できる ③事前に説明書類の送付しておく、などが整っている環境下であれば、パソコン・テレビ等の端末を使っての説明が認められています。
買主としての心構え
繰り返しになりますが、この重説には不動産の①物的、②法律的、③経済的、④環境的要因について詳細に記載されています。
それぞれが不動産の価値に大きな影響を及ぼすため、疑問点や不安な点があれば必ず確認するようにしましょう。一般的には契約時に、買主が内容を了承したことを記すための記名・押印を求められることもあります。
あとで聞いていなかった、とならないよう、最新の注意をもって内容を確認するようにしましょう。決して、読まない、内容を理解しない、ということがないよう、注意してください。
重要事項説明書の記載内容
重要事項説明書の記載内容概略
以下が重要事項説明書の記載内容概略になります。
その他の書類(物件状況告知書・付属書類)
付属書類とは、重要事項説明書の記載内容についての少詳細情報を付属書類として添付したものになります。たとえば、謄本や開発登録簿の写しなどです。
重要事項説明書の内容で網羅できないものについては、物件状況告知書という書類が追加される場合もあります。
重要事項説明書の見方のコツ
重要事項説明書が大事な書類であることはお分かり頂けたと思いますが、初めて不動産取引を行う方であれば、その膨大な量に驚かれると思います。そこで私の実務経験を踏まえ、重要事項説明書を効率良く読むコツを以下に記載します。
それは書いてある内容を、買主から見た制限、義務、権利に分けて考え、特に自分にとって不利益になることがないかを考えながら読むことです。
制限:~してはならない
義務:~しなければならない
権利:~することができる
となります。
制限の具体例としては、たとえば、ホテルを建築してはならない、建物は〇m以内にしなければならない等、義務の具体例としては、町内会費として〇円を支払わなければならない等、権利の具体例としては、ホテルを建築することができる、建物は〇m以上とすることができる、契約を〇日までに解除することができる等
になります。
一つ一つの項目が買主からみて、制限、義務、権利のうちのどれなのかを意識しながら重要事項説明書を確認することを推奨します。
重要事項説明書(重説)のチェックポイント
物件に関する事項
登記された権利の内容
不動産登記の権利部には「所有権に係る登記」と「所有権以外の登記」の2つがあります。
有権に係る登記については、現在の所有者以外の権利(所有権移転仮登記・買戻し特約の登記 等)がないかどうかチェックしましょう。こうした登記があると、購入後に所有権を巡るトラブルに進展する恐れがあります。また、所有権以外の登記については、金融機関の抵当権が登記されていることが多いですが、通常、引き渡しまでに抹消することが条件になります。
実際の所有者と売主が同一であるか、代理の場合に的確な代理権限があるかも注意しましょう。
法令上の制限
土地の利用に対して主に制限を受ける法令は都市計画法と建築基準法です。
都市計画法では主に「用途地域」や「地域地区」について、建築基準法では主に「建ぺい率・容積率」や建物の「高さ制限」などについて記載されます。これらの制限により建てられる建物の階数や用途などが決まりますので、しっかり確認しておきましょう。
建てられる用途や高さが変わればその土地のバリューが変わります。また、都市計画法や建築基準法だけではなく、その土地独自の地域の条例にも規制がかかっている可能性がありますので、注意しましょう。
道路との関係
道路は建物を建てる上で非常に重要なもので、原則として、道路に2m以上接していないと建物を建てることはできません。また前面道路の幅が4m未満の場合には、道路に面する一定部分を後退(セットバック)させる必要が生じます。道路の種類(公道・私道)、幅員、私道の場合には負担金の有無などをチェックしておきましょう。
また用途地域が住居系なのか、それ以外なのかによって、前面道路に基づく容積率上限が変わる可能性がありますので、用途地域の確認も必要になります。
たとえば、前面道路4mで住居系用途であれば掛け目0.4の160%、それ以外の用途であれば掛け目0.6の240%となり、もし用途地域に基づく指定容積率が200%であれば、小さい方が採用されるため、前者では160%、後者では200%が上限となります。
給排水・ガス・電気等のインフラ整備
水・ガス・電気などのインフラについては、その有無はもちろん、公営か私設かを確認しましょう。公営ならほぼ問題ありませんが、私設のインフラは負担金が必要だったり、将来的に改修が必要になったりする可能性があります。
またそのインフラ負担金については、管だけではなく、その管を通すための敷地利用料が含まれる可能性があるため、注意が必要です。
取引条件に関する事項
契約の解除に関する事項
契約を解除できるケースと解除できる期限についてしっかり把握しておきましょう。また解除時に支払済みの手付金等が返還されるかどうか、違約金が発生するのか等も確認しておくことが大切です。
手付については解約できる要素を盛り込んだ解約手付であれば解約できますが、その他の手付、証約手付等であれば解約できませんので注意が必要です。
金銭の貸借に関する事項
ここには利用する予定の住宅ローン(金融機関・金利等)が記載されますが、融資特約による白紙解除の要件になりますので、金融機関名や融資条件に間違いがないかよく確認しましょう。「融資利用の特約の期限」までは白紙解除できますが、それを過ぎると違約金が発生することもありますので、日付の確認もしっかり行いましょう。
その他のチェックポイント
登記簿謄本、建物図面などとの照合
重要事項説明書には、説明対象となる「不動産の表示」が記載されています。土地については、所在地・地番・地目・地積(土地面積)等が、建物については、所在地・家屋番号・構造・床面積等が記載されます。この内容が登記簿と一致しているかどうかチェックしましょう。
地積については、登記簿の面積と実測の面積が一致しないことがありますが、この場合は、どちらの面積に基づく売買かを明確にしておく必要があります。また建物についても、登記後の増改築等で面積が一致しないことがあります。その場合は、増改築時の図面をもらい確認しておくとよいでしょう。
将来、何らかの影響を受ける可能性の有無
将来の生活環境に影響を与える可能性のある事項についても確認しておきましょう。例えば、隣地に日照・通風を妨げる建物や、騒音や悪臭を生じる施設などの建築計画はないか。また、前面道路の拡幅や用途地域・地域地区の変更など、行政による将来計画の有無も確認しておくとよいと思います。
重要事項説明書に関する動き
IT重説
実証事件自体は既に始まっていましたが、コロナ禍で更に加速したものとして、IT重説があります。私自身も海外の投資家との取引のためにわざわざ海外にまで重要事項説明書を持っていき説明したことがありましたが、これからはIT重説でわざわざ行かなくとも、もしくは顧客に来日してもらわなくても、また日本国内の離れた場所での取引でもスムーズに取引ができるようになるでしょう。
民法改正
2020年4月に民法が改正されました。今回の改正で大きな動きとしては、現行の「瑕疵(かし)担保責任」が「契約不適合責任」という考え方に変わった点などが挙げられます。
災害関連
最近日本では災害リスクが年々大きくなっています。それを踏まえ、2020年1月より国土交通省は水害リスクについての説明を義務化すると答弁しました。これまでも重要事項説明書の付属書類に添付する形で対応していた会社もあると思いますが、これを踏まえて各不動産会社が今後対応するようになるはずです。
いかがでしたでしょうか。
もし何かしらお役に立てる記事でしたら幸いです。