売主、買主、仲介会社の複雑な利害関係
売主、買主、仲介会社のそれぞれの立場
不動産は、この世の中の商品で最も売主と買主の利害対立が起きやすい商品と言っても過言ではありません。
売主
売主のニーズ
高く売りたい
リスクを切り離して、良い条件で売りたい
本当の売却理由や最低限の価格ラインを教えたくない
物件のマイナスポイントはなるべく見せないようにしたいetc…
買主
買主のニーズ
安く買いたい
リスクを受け取らないように、良い条件で買いたい
本当の売却理由や最低限の価格ラインを知りたい
物件のマイナスポイントをなるべく見つけたいetc…
そして、不動産売買取引において、もう一つ考えなければならないのが、売主・買主の間に入る仲介会社の立場です。
不動産仲介会社
不動産仲介会社のニーズ
売買代金を高くして多くの手数料を収受したい
仲介責任・リスクはなるべく切り離して、売主・買主間の合意に持っていきたい
時間が経てば経つほど、論点・問題点が出て来るため、早めにクローズしたいetc…
といったイメージです。
買主視点でどう交渉するか?
売却理由の真相と希望のスケジュール感を探る!
当たり前のことですが、不動産売買は売りたい、もしくは売っても良いと考える売主がいて初めて成立します。
売主にはその不動産を売却検討する理由及び希望のスケジュールが存在します。
たとえば、
事業で失敗して資金が急に必要となった
マーケットが好調なため検討し始めた
相続が発生した
引っ越すこととなった
等、様々な要因が考えられます。
売主によりますが、私の経験上、本当の売却理由を明かしたくないという売主は多いです。
なぜならば、本当の売却理由を買主に知られてしまうと、足元を見られてしまい交渉を有利に進められてしまう可能性があるからです。特にいつまでに売却しなければならない、という売り急いでいる場合には、売主に対して有利な交渉を進められます。
したがって買主としては、売主のそのような事情を前提として、真の売却理由の探りを入れる必要があります。
具体的には、
直接、売主や仲介会社に繰り返し質問する
可能であれば、その他の関係者(例、近隣住民やテナント、その売主のお財布事情を知る人)にヒアリングする
物件の粗探しをする!質問マシーンになろう!
別の効果的な手法の一つです。
一般的に、売主は物件を所有していた張本人であり、仲介会社は不動産のプロです。
したがって、売主・仲介会社と、買主の間には、大きな情報の非対称性が存在します。
買主からすれば、物件の状態がブラックボックス化されてしまうのです。
そこで、個人的には以下の4つの視点で物件の粗探しをすることをおススメします。
物件の粗探しをして、マイナスポイントを見つけることで、その物件に存在するリスクを事前に確認できるともに、そのマイナスポイントを使って、価格減額や条件交渉のネタに使うことができます。
このマイナスポイントは多ければ多いほど、交渉材料になります。
売主も当然、自身に有利な交渉をしてきますので、その際に、交換条件とするのもありでしょう。
但し、あまりに過度にマイナスポイントを強く言い過ぎたり、売主・仲介会社の気分を著しく害してしまう行為は逆効果になりますので、バランス感覚が大切です。
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物的マイナスポイント
建物の損傷
修繕・リノベ・リフォームの必要性etc…
法律的マイナスポイント
遵法性に疑義が生じるような点がないか否か
(例、建築基準法違反、既存不適格設備)etc…
経済的マイナスポイント
その物件の売り出し価格やテナントがいる場合の賃料は妥当か否か
(必ず周辺の類似物件を調べましょう)
完全所有権を阻害する権利などが付着していないか
テナントの属性や契約内容
(例、滞納が生じていないか否かなど)etc…
環境的マイナスポイント
近隣住民の様子はどうか
周辺に物件価値を下げるような嫌悪施設がないか否か
(例、ゴミ屋敷、道路や交通の騒音、工場やにおいの出る施設の有無など)etc…
上記の①物的、②法律的、③経済的、④環境的チェックに有益なサイト、また大手不動産会社仲介リストや物件情報については、以下の記事でまとめています。
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競合の有無を探る
いくら交渉がしたいと思っても、競合が多数検討しているような状況では、交渉が難しいことも多いです。
たとえば、男女関係でも、モテる男性や女性は条件を良く付き合う人を選ぶことができるのと同様かもしれません(笑)。
したがって、その物件について以下を事前に調べましょう。
競合の数
売却方法
活動している仲介会社の数
売却活動期間
もし既に活動を始めて一定期間が経過しているにも関わらず、まだ売れていないということは、買主探索に苦労している可能性が高いです。
また、売却方法についても、ネット掲載や多くの仲介会社を使って広く活動をしているのか、それとも、少数限定で活動しているのか、によっても変わってきます。
競合の状況を適切に把握することにより、交渉を有利に進められる可能性があります。
一点注意点として、売主及び買主の間に入る仲介会社は、必ずしも競合についての真実を教えてくれるわけではありません。仲介会社のニーズとしては、早く取引を成立させたいという思いがあるため、競合がいなくても競合がいるふうに急かすことが多々あります。
仲介会社を上手く味方に付ける!
仲介会社は、買主自身の代わりに売主と交渉し、また、買主が検討にあたって必要な説明をしてくれます。
宅建業法上では、買主の購入前に物件に関する重要事項の説明も義務付けられています。
しかし、上述のように、仲介会社は仲介会社ならではの別のニーズを有しています。
この仲介会社を上手く操り、見方に付けることができるかどうか、が成功のポイントです。
そのためには、以下を検討すべきです。
その仲介会社だけが活動しているのか、その先だけを信頼して良いか否か
本当に購入する意欲があること、資金的に問題がないことを伝える
(融資・ローンを使うことが多いと思いますが、予め金融機関への相談は同時並行でスタートしておきましょう。融資に時間がかかり、スピード間で競合に競り負けるということが多々あります)
最後の交渉、最後のお願いをする!
私自身の過去の経験から、結構効果があるのは、最後のお願いです。
「ここまで金額を下げてくれたら即決する」
「この条件を譲歩してくれたら即決する」
というように、最後のお願いであることをアピールすると、上手くいくケースがあります。
これは交渉相手がこちら側の最も強い、重要視している希望を認識することができること、
また、早く案件クローズさせたい仲介会社も、やるべきことが明確になることから、効果的な手法です。
人間は判断を仰がれない場合には、決断できないということがあります。
これは例えば男女の関係でも当てはまるのではないでしょうか?(笑)
付き合うのか、付き合わないのか、はっきりして欲しいと一方が迫れば、相手は回答せざるを得なくなります。
不動産も良くお見合いや結婚に例えられることが多いですが、同様のことが言えます。
但し、その場合でも、金額や条件があまりに先方の希望とかけ離れている場合には、逆効果になります。
適度な、最後の交渉と思って臨むようにしましょう。
妥協するところは妥協し、マナーは守る
今までの話の逆を言っているように見えるかもしれませんが、契約はあくまで相手あってのことです。
交渉をし過ぎて、相手に嫌われてしまっては元も子もないのです。
したがって、自身の要求をすべて押し付ける、というスタンスでは上手くいきません。
買主として、ここは譲れないが、ここは条件次第でも譲っても良いというポイントを持ち、
売主に対して一定の譲歩をすることが必要不可欠です。
また、買主としての礼儀・マナーも気を付けるようにしましょう。
特に私の経験上、買主の態度として良くないことが、購入直前で契約交渉をするパターン、後出しで条件を追加し売主を困らせるパターンです。最悪の場合、取引ブレークになる可能性もあります。
一般的に、買付証明書を提出したあとは、暗黙の了解としてそれからの価格交渉は難しくなります。
買主自身の要求を言うタイミングは難しいですが、お互いの合意がある程度取れた契約直前などは避けるようにしましょう。
以上になります。
いかがでしたでしょうか。